今日、映画「国宝」を六本木のTOHOシネマズで鑑賞してきた。
🎞 あらすじ
抗争で父親を失った極道の息子・喜久雄(吉沢亮)は、上方歌舞伎の名門・花井一門の当主・半二郎(渡辺謙)に引き取られ、育てられる。
ライバルであり兄弟のように育った俊介(横浜流星)と競いながら、歌舞伎の世界で頂点を目指すも、血筋・才能・芸への執念に翻弄される。
芸にすべてを捧げる喜久雄はやがて“国宝”と称される存在となるが、その裏には大きな代償があった…。
好きなシーンと考察
悪魔との契約
境内で娘に向けて「神様と話してたんとちゃうで、悪魔と取引してたんや」と語るシーン。
芸のためなら命も大切な人も犠牲にするという狂気的なまでの覚悟が伝わる。
この言葉を“娘”に向けて放つという皮肉の効いた構図も強烈だった。
芸を続けよと諭される
半二郎から「芸で復讐してみろ」と言われるシーン。
血縁のない喜久雄は、芸を続けることでしか世界と繋がれない。
だからこそ、干されようが何があろうが“やめないこと”に意味がある。
このセリフには大きな重みがあった。
万菊の存在感(田中泯)
田中泯が演じた万菊は圧巻。
目線や手の動きだけで観客を支配する表現力は、まさに“国宝”そのものだった。
実際には舞踏の第一人者で、歌舞伎経験はなかったそうだが、インタビューで語られる役への共感の深さに納得。
劇場体験の必要性
舞台演出、カメラワーク、観客のざわめきと静けさのコントラスト、すべてが「劇場」で観るからこそ意味がある。
音響も含めて体験する、まさに“没入型映画”。
『落語心中』との共鳴
テーマ構造がよく似ている。
芸を選び人生を削る師弟の物語。落語と歌舞伎、ジャンルは違えど“業”と“覚悟”の物語として通じ合っていた。
ちなみに原作としては『落語心中』(2010~)の方が先。
このあたりを比較してみるのも面白い。
まとめ
『国宝』は芸に生きる者たちの宿命と、その業の美しさを描いた骨太な物語。
言葉ではなく、目線や沈黙に込められた表現が印象的で、まさに“映画館で観るべき”一作だった。